映画 Yves Saint Laurent を見たきっかけは、サンローラン役の俳優ピエール・ニネがとても美しかったから。
そんな単純な理由で見た映画は、色々なものと戦いながら
そして色々なひとに支えられながら、華やかに見えて真っ暗闇を歩んだイヴサンローランの人生が描かれていた。
それ以来、彼と彼を支え続けたピエール・ベルジェという男性が育んだ物語に興味をもっていた私は、
2017年10月、パリにイヴサンローラン美術館が出来たと聞いて必ず行こうと思っていた。
ちょうど同じタイミングでパリを旅していた姉のような存在の人と、美術館前で待ち合わせて入館。
彼らが実際に使っていたサロンやアトリエが、そのまま美術館になっていた。
最初にこの美しい空間で、コレクションの映像を見る。
そして、彼が造ったものたちが飾られたフロアへ。
モードやファッション業界に詳しいわけではないので何の知識も無かったけれど
当時、YSLが次々と新しいファッションの風をつくっていたということは分かった。
ただ新しさがあるだけではなく、品もあるのが素敵。
デザインした洋服に合わせ、布などを一つ一つ選んで行く、気が遠くなるような仕事。
思わず息づかいが聞こえてきそうな、繊細な絵と文字。
ジャケットのボタンがピアスと同じだったり、アクセサリー類も存在感を放っていた。
1着を完成させるのに、どれほどの時間を要するんだろう..なんて、週十年前に思いを馳せてみたり。
サンローランが描いたアートもたくさん飾られていた。
ジュエリーが一面に飾られたウィンドウは、目が眩んでしまいそうなほど輝いていた。
館内はフロアごとにテーマやテイストが異なる。
色鮮やかなドレスも素敵だけれど、やっぱりモノトーンは永遠に素敵。
写真では伝わらないのが悔しいけれど
繊細なレースが重ねられたこのブラックドレスの儚さに見惚れてしまった。
最上階はアトリエの再現。
実際に彼らが使っていた道具や読んでいた本、デザインしたスケッチなどがそのまま置いてある。
大きな鏡があったので、他のゲストがいないタイミングで撮った写真がこんなにもボケていた。
美しい物を存分に見て飛び跳ねていた私の心の現れかもしれない。
イヴサンローランを代表する作品を愛でながら、彼とベルジェの関係について考えていた。
細かくて、優しくて、心が不安定で弱い所があるサンローランを
ベルジェはどこまでも支え、時には引っ張り、信じ、愛し続けた。
どんな事がおこっても、逃げ出さないベルジェは、本当に強い。
心待ちにしていたこの美術館のオープン1ヶ月前に亡くなったことがとても悔しく思えた。
アートに触れる時は、視界から入ってくる情報以上に
当時の人達の気持ちを想像しては共感したり、感情移入したりする時間が好き。
この美術館に行こうと思っている方は
サンローランとベルジェのドキュメンタリーを見てから行くと、より豊かな感情が芽生えるはず。
愛されることも、才能の一つ。
彼は本当に才能豊かな人だったのだと思う。
*掲載 旅MUSE COLLECTION
・Countdown in Paris - パリ シャンゼリゼで凱旋門の花火とカウントダウン –
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Musée Yves Saint Laurent Paris
5 avenue Marceau 75116 Paris
Tel.: +33 (0)1 44 31 64 00
最寄り駅: Alma-Marceau M9
営業時間: 火-日 11:00 – 18:00 (Last Entry 17:15) 金 -21:00