ずっと書こうと思いながら、大切な思い出になりすぎて書けていなかった事をやっと書こうと思う。
ラベンダーの香りを感じるたび、思い出すあの夏のこと。
いつからか、ラベンダー畑に憧れていた。
初めてラベンダー畑を目にしたのは、テレビの中に映る北海道のものだった。
そんなラベンダー畑が南フランスにあると知り、訪れずにはいられなかった。
具体的に調べるまでは、ラベンダー畑が南フランスのどのあたりにあるのか、全く理解していなかった。
ニースからバスか何かで行けるのだろうと思っていたら、大間違い。
今回私が訪れたValensoleというラベンダー畑が多くあるエリアは、海沿いのニースから車で2時間半以上かかる場所にある。
レンタカーで移動するなら不可能ではないが、ニース発のツアーは存在しない。
海外での運転が不安な私たちは、Aix-en-Provence発着の1dayツアーに参加。
その年の気候によって見頃の時期が少しずつずれる上に、暖冬だからといってラベンダーの開花が早いわけでもないという。
けれど、日本の桜のように見頃が1週間で終わってしまうというわけではない。
と言うのも、畑によって少しずつ開花の時期がずれるようなのだ。
この年は開花が早かったようで、私が訪れた7月10日は見頃の終盤だった。
向かう途中に車窓から見えたのは、いくつものラベンダーが刈り取られた後の畑。
もう残っている所がないのではないかと不安が募った。
数分後、その不安は一気に消え去った。
ついに辿り着いた、憧れの南フランスのラベンダー畑。
子供の頃のように大はしゃぎで、ラベンダー畑を駆け抜けたこの写真はお気に入りの一枚。
こんなにも多くのラベンダーがあると、顔を近づけ香りを感じたくなるもの。
正直、香りは覚えていない。
それほど、ここにいられることが嬉しくて舞い上がっていたのだ。
ラベンダー畑へは、真っ白な洋服を着て行こうと決めていた。
白いノースリーブと、風になびく白いスカート。
モロッコで購入したパープルの刺繍が入ったかごバッグには、この前日にAixのMonoprixで見つけたラベンダーカラーのスカーフを巻いた。
このラベンダー畑はとても広く、形作っているのかと思うほど綺麗なハートの形をした木々も。
私たち以外にも数組の観光客がいたけれど、広いのでこんな風に自分だけの写真を残すことが出来た。
どの写真も、加工で他の人を消すといったことは一切していない。
駐車スペースの近くには、ラベンダーカラーがポイントの住宅が。
こんなにも太陽が降り注ぐ場所での日々はどんなものなのだろうと、思いを巡らせた。
後ろ髪を引かれながらも、次の場所へと移動。
次に訪れたのは、ラベンダーと向日葵が出会う場所。
しかし、残念ながら向日葵は見頃を過ぎ、太陽の方を向いてはいなかった。
自然はコントロールできないもの。
またいつか、元気な向日葵とラベンダーを一緒に眺められますようにと、願いを込めてシャッターを切った。
ツアーでは、ラベンダー製品の販売所へも立ち寄った。
続いて訪れたのは、傾斜がなく平坦な場所にあるラベンダー畑。
太陽の光をまっすぐに受けた綺麗な彩りに、思わず息を飲んだ。
広い空と遠くに見える山々が美しくて、いくらでもここにいられる気がした。
パリでは “映画の中の世界” に入り込んだような気になる人も多いはず。
プロヴァンスでは、 “絵画の中の世界” に迷い込んだような気がした。
20代だったこの時と、これから年を重ねたうえで訪れるプロヴァンスは、また違う魅力を感じるかもしれない。
この旅で南フランスが大好きになった私は、いつの日かここで暮らしたいとさえ思った。